「青い器」と九州波佐見・有田買い付け旅行記

昨年の暮れ、随分と久しぶりに、九州の波佐見、有田、二つの窯業の街を訪ねました。

早朝の便で飛び、長崎空港に降り立って先ず向かったのは、長崎県東彼杵郡波佐見町。
400年以上の歴史を持つ産地で、
かつてヨーロッパへの輸出に使われていた「コンプラ瓶」や、
江戸時代、手ごろな価格で売られ庶民の食卓で愛用された「くらわんか碗」などが有名で、
今日も全国屈指の陶磁器生産地として広く知られています。

波佐見と聞いてまず思い出すのはこの景色。
波佐見の中でも多くの窯元が残る陶郷「中尾山」は、
風情のある街並みが今も訪ねる人にその長い歴史を感じさせてくれます。

陶郷「中尾山」 橋の欄干にも染付タイルの装飾

高台に上り町を見渡すと、中尾上登窯跡(なかおうわのぼりがまあと)
(推定操業年代:1640年代~1920年代)も見ることが出来ます。

中尾上登窯跡

そんな歴史のある波佐見は、
伝統技術に誇りを持つと同時に、若きアイデアの生まれる町でもあります。

Maduが四半世紀以上に渡りお取引をさせていただいている窯元でも、
あちこちで世代交代がされ、新しい息吹と伝統の技術が出会った、新鮮な器を目にする機会も多くあり、
こうしてまた百年、二百年と続いて行くのであろう歴史の一端を垣間見たような感慨深い瞬間がいくつもありました。

では早速、現地でMaduが買い付けをし、
この夏に入荷する器の数々をご紹介したいと思います。

陶房青の瓔珞紋(ようらくもん)

装身具や荘厳具を意匠化した瓔珞紋(ようらくもん)が施された器は、
呉須の濃淡が生み出す陰影で、小ぶりでも存在感のある仕上がりに。

陶房青の瓔珞紋(ようらくもん)皿
坂道

どこの窯を訪ねるにも、坂道を上ることになるのですが、
陶房青さんもその一つ。
えいやえいやと上る坂の中腹に、工房があります。

陶房青さんと言えば、1998年よりお取り扱いをしているこの「豆しぼり」の器。
夏になるとこの器に素麺を盛りたくなるのです。
Maduファンからも永く愛されている器です。

陶房青の瓔珞紋(ようらくもん)皿
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一誠窯の鉢と猪口

一誠窯の鉢と猪口

モダンなモザイク柄のようなユニークな絵付けに一目惚れをした鉢。
Maduのリクエストカラーで絵付けをし、猪口も作っていただいて、
更に魅力的に仕上がりました。

一誠窯の鉢と猪口

緑に囲まれた一誠窯と絵付け作業をされる陶工さん達。
どこへ行っても豊かな緑と広い空。

一誠窯と絵付け作業
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筒山太一窯のスリップウェア

スリップウェアの技法で描かれた格子のような、タイルのような、エキゾチックな模様が印象的な器は、
和洋を選ばず様々なお料理を受け止めてくれ、日々の食卓で活躍してくれるでしょう。

太一窯さんとはお父様の代からの永いお付き合いですが、跡を継がれた息子さんが生み出すこのシリーズ、
ブルースリップフラワーのネーミングも素敵です。

筒山太一窯のスリップウェア
筒山太一窯のスリップウェアの模様

太一窯の工房の様子。
素焼きの器が綺麗に並んだ様子は、何度見ても美しいなと感動します。

太一窯の工房の様子
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小林巧征さんの器

一つ一つ手描きで描かれた格子柄と駒筋柄のデザインが印象的な器です。
波佐見に生まれ、九谷で学んだ小林さんの「新しい表情」を持つ器にとても惹かれました。

「おび」「うずうず」と付けられた柄の名前にも、彼のしなやかな発想とセンスが。
和菓子とお茶、ケーキとコーヒー、おにぎりと汁物、酒肴とお酒。
色々な使い方が思い浮かび、楽しい気分になります。

小林巧征さんの器
小林巧征さんの器 和菓子とお茶、ケーキとコーヒー、おにぎりと汁物、酒肴とお酒

工房は小川のほとり。
制作作業はせせらぎを聴きながら。

小林巧征さんの工房
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さてお次は、お隣佐賀県は西松浦郡有田町へ。
有田の器生産もやはり、400年を超える歴史があり、更には、
日本で最初に磁器が焼かれた産地として知られ、
以来、今日でも日本一の生産量を誇る器の産地です。

鮮やかで美しい「色絵」の器は、ヨーロッパへと輸出されていました。
日本国内では一部の富裕層に向けた贅沢品でしたが、
有田焼もまた、食文化の変化に伴い少しずつ庶民の食卓に広がって行きました。

有田焼は割烹料理用器としても有名で、
その背景もあり、様々なサイズの中でも、小鉢や小碗などの種類が豊富なのも特徴です。

皓洋窯の小鉢

皓洋窯の小鉢

透明感のある呉須の藍色が美しい小鉢は、
小さいながら存在感があり、
思わずコレクションしたくなります。

夕暮れ時の皓洋窯

美味しいものを少しずつ色々。簡単だけれど贅沢な食卓を楽しめます。
(写真は皓洋窯の小鉢9種と、陶房青の小皿2種、副武製陶所の小皿1種を並べました。)

皓洋窯の小鉢9種と、陶房青の小皿2種、副武製陶所の小皿1種
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副武製陶所の六角鉢と六角皿

更にもう少し足をのばして、お隣の嬉野市へ。
温泉や日本茶で有名なこの地で作陶をされている副武製陶所さんにお邪魔しました。

浅い六角と深い六角。
一本一本丁寧に手描きされた十草模様の味わいと、敢えて施した吹墨によって涼やかさも加わった小鉢は
煮物やお吸い物、お浸しなど、日々の食卓で万能に使えます。小皿は薬味や醤油用に。

副武製陶所の六角鉢と六角皿
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買い付け旅行記、お楽しみいただけましたか?
窯を訪ね、作り手を訪ね、見て、触って、選ぶ。
これは1994年のMadu誕生から変わらず行ってきた宝探しです。
機会がある限り、また魅力的なアイテムと出会えるよう旅をしたいと思います。

ご紹介した以外にも、沢山の窯を訪ね(2日間で18窯)見つけた器が、
秋冬や来春にも続々と入荷しますので、
ひき続きどうぞお楽しみにお待ちください。

器の産地ならではの光景に 思わずパチリ!